フレイザーとブルックは南米に持っていた採掘権を、マザールに捨てさせる訳にはどうしても行かなかったのです。採掘権がどう言う物かはフレイザーの説明をご覧下さい。しかしこれには特別な秘密やカラクリがある訳でも何でもありません。前掲のパワーポイントの説明でも分かるように、アルゼンチンを中心とした南米の鉱山投資(正確には採掘権の取得)は、莫大な潜在価値を含んでいたからです。フレイザー自身の口による説明をご覧になって下さい。僅か数十万ドルから数百万ドルの投資で手に入れた採掘権が、ちょっと手を入れるだけで、数千万ドルから億ドル単位の資産価値に化けるのです。彼等が計画していたツゥクマン地区の銅山開発のように、精錬所とのジョイント・ベンチャーにしても良かったし、あるいは既に第三者の手に渡ってしまった油田のように、そのまま施設ごと売却しても良かったのです。特に銅山開発と中国への輸出計画について言うならば、現在の銅価格が当時に比べて約4倍半に値上がりしている事実に照らし合わせると、マザールの嘘八百は無責任を通り越して本当に犯罪的だと思います。ツゥクマン地区における鉱山開発に関しては、現地の担当大臣からお墨付きが出ていたにも拘わらず、マザールはこの事実も黙殺しました。これは当時、正確には2001年1月24日付けで、アルゼンチンのある日刊紙に掲載されたスペイン語の記事を、インペリアルの英国本部が英訳してグループ内で配布したものです。この記事を私がさらに日本語に翻訳したものがこちらです。ごく短い記事ですが、それを読めばツゥクマンの鉱区が無価値であるなどと、マザールによる100パーセント完全な作り話以外の何物でもない事が分かります。
また、南アフリカのプラチナ鉱山に関して言いますと、プラチナ鉱区の権利の75パーセントをスプリングボック社が所有しており、さらにスプリングボック社の株式の25パーセントをPI社が所有していた事は、既に図を使って説明した通りです。即ちPI社はプラチナ鉱区の18.75パーセントを所有していたのです。実はスプリングボック社の株式の一部を香港の投資顧問会社を通じ、オーストラリアのある投資家に売却する話が、実際ある程度まで進行していた事を私は知っています。現存する関係者に迷惑が掛かりますので全ては開示できませんが、これはその交渉の初期段階のプレゼンテーションで使われた資料です。ここには具体的な鉱区名や埋蔵量も記されています。ところで、この資料に記されている市場価値は6億9千万ドルとなっており、11−1で上げたホワイト・ボードの写真による説明にある市場価値、7億5千万ドルとは異なっていますが、それは単に時間の違いによるものです。また私は全く関与していませんでしたが、同社を南アフリカの証券市場で上場するための作業が急ピッチで進められており、上場計画の担当者が調整のため各地を行き来していた事も知っています。もしこれらの計画が無能且つ悪意ある清算人達によって妨害を受けず、当初の計画通りに進行していたとしたら、PI社に移転された皆様の債権は、今頃は文字通り盤石な状態なっていた事は疑いを入れません。
その当時ですら既に、各国の天然資源関連会社は、将来の資源確保のために未開発鉱区を競って探していましたが、今日の国家エゴ剥き出しの熾烈な資源獲得競争と、暴騰を続けている天然資源の市場動向をみれば、フレイザーやブルックの先見性が如何に正しかったが分かると言うものです。実は彼等は、消費者金融のように短期の回転を中心とした金融業務主体の体質から、実物資産(天然資源、特に鉱物資源)を保有する事により、その潜在価値から長期間にわたって利益を生み出して行く体質へと、グループ全体のリストラクチャリングを徐々に進めようとしていました。インペリアル・グループはそのミッション・ステイトメント(理念の宣言書)において、「絶えず・・・既存商品の安全性を高め、人的資源を教育・開発し、新規の市場機会が出現する度にそれを捕らえる事により、グループの継続的発展に寄与する一方、投資家には可能な限り高い利回りを提供する」事を謳っていますから、世界の経済環境にマクロ的変化が見られ始めていた当時、新しい投資戦略を考えるのは経営者として寧ろ当然の事であったのです。
これは一見すると無謀な転換に見えるかも知れませんが、実はそうではありません。寧ろそれは当然で、賢明な判断であったと言っても良いと思います。それまで10年以上も世界的に続いていたディスインフレ傾向は、消息段階に入りつつある兆候が見えていましたし、その後の世界経済が今度は徐々にインフレ傾向に移行して行く事は、長期的な流れを考えてみれば必然の事でした。即ち、もうマネー・ゲームや金融商品で資産価値を保全できるような時代は終わり、手で触る事のできる実物資産を持っていないと、財産価値が確実に目減りする時代が来るであろう事は、タイミングは兎も角として先ず確実であったと言えます。これからは金融資産よりは実物資産を持つ者が勝者になり、中でも天然資源の獲得競争は世界的に激化すると言う事を見通し、その方向にいち早く方向転換しようとしたフレイザーやブルックの大局的判断は、現状を見れば完全に正しかった事が証明されています。彼らの鉱山事業への傾倒はバクチなどではなく、長期的観点から考えてごく合理的な事をしようとしたに過ぎません。そしてその結果、フレイザーとブルックはアルゼンチンを中心とする南米で、47箇所の採掘権を手に入れました。これには銅の他に、多少の金、石油、それに貴石と半貴石などが含まれていたと記憶します。アフリカのシエラ・レオネでは黒御影石の採掘権と、規模はどのくらいか知りませんがダイヤモンドの商権を手に入れ、また南アフリカではプラチナ採掘会社の株を手に入れました。この文書は公開を予定されていない純粋に内部の資料でしたが、ここには南アフリカでプラチナ鉱山を手に入れた事と、その鉱山に関する主要事項が述べられています。
しかしその当時の段階では、まだどの鉱区も商業ベースには乗った採掘は、行っていなかったと思います。ただ保有していただけでしょう。でもそれで構わなかったのです。幾つかの鉱区は自ら開発するつもりがあったのでしょうが、その他のものはただ値上がりを待って保有しているだけでも、十分に意味があったからです。売りに出しさえすれば買い手は幾らでも付く状態だったのです。しかし結果として彼らは、せっかく持っていた採掘権を事業化する事もできず、また売却する事もできませんでした。何故でしょうか。実態はマザールが主張しているように、フレイザーやブルックが鉱山事業に失敗した、もしくは鉱山事業は実体がなかったと言う事ではなく、せっかく獲得していた採掘権をマザールが全て捨ててしまったからです。鉱山には何の専門的知識も持っていないライアンやウッドは、どう言う訳か一度も説明された事のない理由によって、黄金の卵を産む筈だった採掘権を無価値であると即断し、採掘権の更新費用をアルゼンチン政府に払わなかったばかりか、それならば自分達で払うと言ったフレイザーやブルックを妨害して、あくまで更新料を払わせずに採掘権の期限切れで消滅するように誘導したのです。この点に関してもフレイザーの証言があります。シエラ・レオネの黒御影石に関して言えば、親会社であるフレイザー・ブルック・パートナーシップを破産させる事により、シエラ・レオネ政府に対する更新料の支払いをストップさせ、黒御影石の採掘権も自動消滅するに任せました。アルゼンチンにおいてもシエラ・レオネにおいてもマザールは全く同じ手を使い、フレイザーやブルックが更新料の支払いをできないようにする事によって、採掘権が自然に消滅するように誘導したのです。これは犯罪以外の何物でもありません。
誤解があるといけませんので申し添えますが、フレイザーやブルックは、有形の鉱山を物理的に所有していると言っていた訳ではありません。ただ無形の権利である採掘権を所有していただけなのです。もし仮に彼らが、彼らの名義で登録された有形の鉱山を持っていたとしたら、如何にマザールが鉄面皮だとは言っても、そこに存在するものまで否定する事は不可能です。しかし彼らが持っていたのは無形の権利であり、それが失効した後ではそれが本当であったかどうかなど、現地の登記所にでも行かない限り誰にも確かめる事はできません。しかし投資家は誰もそんな事を確かめるために、わざわざアルゼンチンやシエラ・レオネまで出掛けて行きはしません。それを知っているからこそ、マザールは言いたい放題の事が言えるのです。
ここでもう一つショッキングな話をご紹介しましょう。これは2006年のいつだったかにブルックから聞いた話ですが、マザールがインペリアル・グループの鉱山事業は実態がない詐欺であった、もしくは採掘権に商業価値は全くなかったと投資家達に説明し、やりたい放題にグループの解体に取りかかっていた頃、実は第三者から『アルゼンチンの採掘権が要らないのならば売ってくれ』と言う申し出があったそうです。しかしマザールはこの申し出を断り、売却交渉には応じようとしませんでした。何故でしょうか。マザールは既に鉱山事業が詐欺であったと言う事にして、全ての採掘権を放棄する計画を立てていました。自分達の能力では追いつかない複雑な物に手を出して苦労するよりは、無価値だからと言って捨ててしまった方が簡単だからです。あるいはその時点で、うっかり放棄されてしまった採掘権がもう既にあり、今更取り返しの付かない状態になっていたのかも知れません。何れにせよ彼らが放棄する事にした採掘権に値段が付くと言う事は、これらは無価値であると言う彼らの判断が根本的に間違っていた事を意味します。と言うよりも『詐欺であり無価値である』と言っていたのが、完全に嘘であった事がばれてしまいます。従ってマザールは、これらの採掘権を売却して少しでも債権回収額を増やす努力をするのではなく、そのような話は初めから全くなかったような振りをして、莫大な資産が無に帰するがままに放置したのです。その後マザールが、フレイザーやブルックが関与していた鉱山事業は、それが南米の銅や宝石・半貴石であれ、シエラ・レオネの黒御影石やダイヤモンドであれ、さらに南アフリカのプラチナであれ、問答無用で必死になって悉く否定していたのはご承知の通りですが、マザールとしてはフレイザーやブルックの鉱山事業が本物であると言う例を、一つでも投資家には知られたくなかったからでしょう。彼らに取って自分達の嘘を最後まで通すためには、フレイザーやブルックの鉱山事業は、あくまでも詐欺でなければならなかったのです。
これはマザールの誤解や無知というよりも、意図的に行った確信犯です。明確な犯罪です。そんな事はあり得ない、清算人達の行動原理は債権者の利益を第一にしている筈である、と無邪気に信じておられる方が中にはあるかも知れません。しかしフレイザー・ブルック・パートナーシップを破産させた事により、皆様へ返ってくる資金が一銭でも増えましたか。とんでもない。未だに一銭たりとも返されていないのが現実であり、今後も返ってくる予定は全く立っていません。逆にもし彼らがシエラ・レオネの黒御影石事業を生かしておいてくれたならば、今頃は少しづつでも返金が始まっていたことは確実です。何故ならば、先に述べたように現に今、残念な事にインペリアルとは関係のない第三者の手によってではありますが、黒御影石の採石事業は現に経営されているからです。つまりマザールは、黒御影石事業が存続しておれば投資家の皆様の利益になり、黒御影石事業が廃止されれば投資家の皆様の不利になると言う事を、重々承知の上でこの事業をも潰したのです。そして自分の所為で膨大な資産が失われた事を、しゃあしゃあと他人(フレイザーやブルック)の所為にしているのです。
もしそれらの採掘権がちゃんと保全されていたとしたら、今はどれくらいの価値になっていた事でしょう。天然資源のその当時(2002年春)の価格と今(2006年秋)の価格を比較してみると、銅が約4.5倍、金が約1.5倍、銀が約2.4倍、石油が約2.3倍になっています。これをみても鉱山投資は大成功の筈であった事が分かります。この莫大な価値になっていた筈の資産をマザールは、投資家に対しては「何もない詐欺だった」と言って、自分達の嘘を守るためだけに捨てたのです。マザールの言う事を真に受けて、回収を諦めかけている投資家には目を覚まして頂きたく思いますが、それにしても寧ろ積極的にマザールの手先となって訴訟を起こし、我々の情報収集と債権回収の努力を妨害している一部の投資家達をみると、愚かしいと言うのを通り越して本当に情けない気持ちになります。何度でも繰り返して申しますが、悪質で利己的であるばかりか、時代の変化の大きな流れを読み取る事のできなかった愚かなマザールは、フレイザーやブルックの優れた着想による事業の芽を潰してしまっただけではなく、投資家の皆様の最後のよりどころである債権保全手段までを、完全に破壊してしまったのです。ここまで来ると、愚かしいと言うだけでは犯罪にならないなどと、他人事のような悠長な事は言っておられないと思います。