ご承知のように、インペリアル・グループの投資債権は英国内におけるものと、英国外におけるものとの二種類に分別されます。そのうち、南米における鉱山投資を含む国外部門の投資の管理及び回収は、そのような経験のないライアンやウッド等の田舎会計士には完全に手に余るものであったため、そうと判断するだけの専門的知識も根拠も全くなかったにも拘らず、強引にこれを詐欺で実態のないものと決め付けて放棄してしまいました。これが全く事実と異なっていた事は今証明したばかりです。つまり、彼らが放棄した債権の一つは、現在価値約3億5千万ドルの油田で、第三者がこれを経営しているのです。一方、通常の個人融資や商業融資からなる国内債権は、それだけでも予想以上の手数料を稼ぐに十分な規模があり、またライアンやウッドにも理解できる程度には単純なものであったため、彼等の回収業務は国内債権のみに向けられる事になったのです。不動産資産を含むこれらの残存国内資産は、市場価値に比べ不当な低価格でマザールの顧客や協力者達に売却されましたが、それでもマザールに毎月1億円の手数料をもたらすに十分なものであったのです。
即ちマザールは、多くの債権者がもの言わぬのを良い事に、本来ならば回収されなければならない債権の約半分(国外分)を放棄し、残る約半分(国内分)を不当な安値で処分した結果の殆ど全てを、自分達の経費と手数料に当ててしまっているのです。これが、何時まで待っても本当の債権者である皆様投資家には、一銭も戻ってこない真の理由なのです。早晩、国内債権の回収が最早これ以上は無理となった段階、即ち自分達の手数料である月1億円以上の回収ができなくなった段階で、マザールは清算業務の終了を正式に宣言し、結局投資家には一銭も戻ってこなくなる事は目に見えています。また仮令そうなっても、マザールとの会議に出席したごく一部の債権者が、これをマザールの規定の手数料として認めてしまっている以上、会議に出席していなかった他の債権者(ほとんど全部の投資家)は、法的には何も抗弁できない状況が作られています。マザールは密かな協力者達だけには十分に報いるのでしょう。これを分かり易く図示すれば以下のようになります。
但し上の棒グラフは、ベンチャー融資として鉱山採掘権の取得のため、実際に使われた金額、即ち帳簿価格(フレイザーからのレターによると、それは約1億ドルだったそうです)だけをベースにして、大体のところを表したものです。現在の市場における実勢価格で評価し直した市場価格で表すならば、放棄されたベンチャー融資の部分は遥かに巨額のものになっています。即ち、商品者金融や一般商業融資が、時間の経過に伴って価値が増大すると言う事はあり得ないのですが、鉱山開発を主としたベンチャー融資は、現に多くの実例が証明しているように、成功した場合には莫大な価値を生み出すのです。
確かに鉱山関係の投資は当たるものもあれば、外れるものもあります。しかし一つのファンドが特定の一つの採掘権だけに投資していると言う事はなく、幾つもの採掘権に対して集合的に投資しているのです。満遍にリスクを分散しているからこそ、確率の問題としてそのうちの何割かが当たれば、それは大成功であると看做されるのです。もう一度考えて見て下さい。前にも述べたように、当時インペリアルが投資していた47箇所の採掘権のうち、たった1箇所の鉱区だけで今や3億5000万ドルの資産価値を持つ会社になっているのです。この事実を皆様はどう判断されますか。もしこれら全ての採掘権をマザールがちゃんと保全していて、仮にそのうちの1割が当りであったとしても、現在の市場価値はもう莫大なものになっていた筈です。マザールがどれほどのものをドブに捨てたのか、彼等がやった事が如何に無茶苦茶の事であったのか、それを考えるととても冷静ではいられません。しかしマザールとしては、このような事を債権者の皆様に知られる訳には、絶対に行かないのです。どんな手段を使ってでも、そのような情報を、あるいはそれを明らかにしようとする運動を潰そうとする理由が、お分かり頂けたと思います。