日本のマス・メディア諸氏には本当に驚かされました。8月に池袋で説明会を行う直前でしたが、幾つかのメディアからインタビューの申し込みがありました。先にも述べましたように、この時点で既にマザールの不正は分かっていましたから、事件の全体の構造を大まかにでも良いから、前もって理解した上で説明会に来てもらえば、マザールの告発と債権回収活動に弾みが付くと思い、最初に名乗り出てきたある通信社の若い女性記者と会う事にしました。その記者とはあるホテルのロビーで会ったのですが、幾つかの印刷した資料を渡し2時間ほども掛けて、実際には何が起こっているのかを説明しました。ここまで丁寧に説明すれば余程の事がない限り、つまり普通に日本語が理解でき、普通に論理的思考能力が備わっておれば、誰でも必ずこの構図を理解できると思っていたのですが、豈計らんやその余程の事が起きてしまいました。インタビューが終わり、最後に別れる時になってその若い女性記者は、私をじっと見て「結局これって詐欺ですよね」と宣うたのです。
私は彼女がマザールの詐欺の事を言っているのかと思いましたが、彼女の様子を覗うにどうもそうではないらしく、彼女が意味していたのは「結局あなたは詐欺をしたんですよね」と言う事だったのです。私は怒りに駆られるよりも何よりも、唖然として「はあ、そうですか」としか返事ができませんでした。全く、今まで2時間この娘は何を聞いていたのだろう、これで大通信社の(仮令駆け出しとは言え)報道記者が務まるのだろうかと、人ごとながら心配になりました。実に不思議な生き物に出会ったような気がました。これを欧米では取材とは言いません。彼女は私から独占取材として、「詐欺」の告白を引き出したかっただけです。しかし2時間にもわたる説明を幾ら聞いても、自ら想定していた結論(詐欺事件の告白)は導き出せそうになかったので、最後に何とか私から「詐欺」と言う言葉を聞いてお手軽に仕上げたかったのでしょう。現に私が言った事、私が提供した情報は一片だに記事にされませんでした。どうしても初めからスキャンダルを物にしたかったのでしょうね。スキャンダルがないのならば作る。でっち上げは彼等が屡々する事ではありますが、それにしても彼女の見識と理解能力の低さには呆れました。
また、8月の説明会の後の事ですが、ある週刊誌からも取材を受けた事がありました。この週刊誌の親会社は反日プロパガンダと捏造記事で夙に知られた新聞社で、私の基本的立場からして本来ならば門前払いにしたかったところです。ただ、会わないならば取材拒否をしたと書くと脅かされ(彼等の良く使う手ですが)、また見せ掛けだけではあれ一応反権力と弱者の味方を装っている社風からして、あるいはマザールと言う海外の傲慢な権力に対抗し、弱者である日本の投資家を救済する運動をバックアップしてくれるかも知れない、と一縷の望みを持って会う事にしたのです。しかしこれは矢張りとんでもない間違いでした。このときに来たのは若いチンピラ風の男性記者でしたが、彼の傲岸不遜な態度と言ったらそれはありませんでした。思い出すのも不愉快ですが、「俺がお前たちの悪事を暴いてやる」と言わんばかりの態度で、人をねめつけるように見据え怪しからん捨て台詞を残して立ち去りました。知能低劣品性下劣なこう言う手合いを、昔は羽織破落戸(はおりごろ)と言ったものです。言論を使ったヤクザ以外の何者でもありません。巨大メディアがバックにいると言う事が、何も勉強しようともしないこう言うサンピン記者に、このような驕慢な態度を取らせているのでしょうか。こう言う手合いが垂れ流す間違った情報を、一番歓迎しているのはマザールで、一番被害に合っているのは皆様方投資家です。
その他にもフリー・ライターと自称する質の悪い物書き達、一度も取材をせずに記事をでっち上げる新聞記者達、卑しい顔つきで口角泡を飛ばしてマイクを突き付ける、まるで突撃隊員のようなテレビ局の女性レポーター等、私が会ったマス・メディア関係者に本当に碌な人間はいませんでした。質の悪い物書き連中の一人に英語が話せる者がいて、デイヴィッド・マーチャントに取材をしたのですが何の事はありません、別のソースから事実関係について裏付けを取るでもなし、ただマーチャントに吹き込まれた事をそのまま、横から縦にして無批判に流しているだけです。マーチャントは関係者の中でも特に札付きの悪です。日本の警察庁の分類で言うと、「会社ゴロ」と「新聞雑誌ゴロ」を一人で兼業している男です。そう言う本質的な背景にはちっとも気が付かず、いい加減なものを書き散らかして嬉々としているのですから、視野狭窄と言うべきか知性の頽廃と言うべきか、嘆かわしい限りです。賢しらなこの男はまた、私がある自民党の某有力政治家の保護を受けているために、警察が手出しをできないのだと言う滑稽な与太を、インターネット上でしたり顔に書いています。こう言う嘘を公の場で発言して恥と思わない人間と言うのは、どう言う人間なのか私には想像ができません。このような明らかな虚偽が一つ混じっていると言う事実によって、この男の書いた他の記事全てに対しても、信頼性が崩れる弊があると言う事に彼は気付くべきです。本人のためにもならないと思うのですが、こう言う相手には言っても詮無き事なのでしょうか。
それにしても日本のメディアはどうしてこんなに幼稚になってしまったのか、私は抑えがたいいらだちを感じます。裏に隠された重大な不正を見抜く論理的な洞察力はおろか、単なるゴシップの臭いをかぎ分ける本能的な嗅覚のようなものさえ、とても備わっているとは思えない、本当に子供のような呆れた人達でした。海外のマス・メディア各社による報道の質に比べ、日本のそれが著しく見劣りがするのは故なき事ではないと、妙なところで納得した次第です。マス・メディア全体のレベルがこのようなありさまでは、日本人報道記者の中からピューリッツァー賞の受賞者は、当面は(写真部門以外では)決して出る事がないでしょう。唯一つの例外として、NHKの若い男性記者が冷静で報道倫理もわきまえ、非常に紳士的な態度であった事が、私に取っては慰めであった事を最後に付け加えておきます。
確かにマス・メディアの世界はピンからキリまであり、中にはゴシップ専門、スキャンダル専門のイエロー・ジャーナリスト達もいます。しかしそれが分かっていたからこそ、なるべく多くのメディアに声を掛けて説明会に来てもらい、その中の一社でも二社でもが真剣な興味を持ってくれる事を期待していたのですが、ここまで見事に全滅するとは全く私の見込みが甘かったとしか言いようがありません。このために債権回収運動が蒙った被害と、その結果としてマザールが受けた利益は計り知れません。説明会の開催に当たっては一部の投資家、弁護士の先生方、旧社員達、マトリックス社など多くの人が協力してくれましたが、広くメディアに声を掛ける計画を立案したのは私であり、この失敗に関しては一人で責任を取らなければならないと思いました。