さて私がリンカーン州のホテルで逮捕されると同時に、私のサリー州の自宅は家宅捜索を受けました。不愉快な事ですがしかし私はそれに抵抗するどころか、寧ろ幾らでも気の済むまで調べてくれるようにと言い、どこに行けば合い鍵が手にはいるかまで自発的に教えたのです。警察は徹底的(家具にあちこち随分傷が付けられていましたし、私の物ではない、他人から預かっていた衣類の包みも、梱包を壊して開けられていました)な家宅捜索をした結果、2台のコンピューターを押収して帰りましたが、そのうち1台は娘の物でした。因みにこれら2台のコンピューターはシステムごと内容を全てコピー(イメージ・コピー)した後、直ちに返すと言われていたのですが、私からの度重なる返却要求にも拘らず、それらが返却されてきたのは何と4ヵ月後の事でした。日英間のように時差のある遠隔地の間で通信をするための手段として、コンピューターは現代社会に取って不可欠の道具です。特に私のように英国に居住しながら日本の債権保全回収組合と、毎日のように文書の送受信をしなければならない者に取って、コンピューターを2台とも取り上げられると言う事は、完全に活動の手足をもがれるのと同然でした。
ところで1台のコンピューターの内容を、そっくりまるごとコピーするのに要する時間はせいぜい数時間であり、これを4ヶ月も押さえておく事には何か特別の意味があったとしか考えられません。今から振り返って考えると、私を逮捕した本当の理由は、家宅捜索を合法的に行う事ではなかったかと思います。何故ならば先に挙げたような状況では、裁判所に逮捕令状や家宅捜索令状の発布を要求しても許可される筈がありませんが、理由はともかく、一旦「逮捕」と言う事実さえ作ってしまえば、家宅捜索は自動的に可能になるからです。そしてSFOや警察は、マザールによってこれが詐欺であると吹き込まれていたため、恐らく家宅捜索をすれば詐欺の証拠が押収できると考えたのでしょう。しかしマザールに取って真の目的は、我々債権者運営委員会が彼等の嘘に関して何をどの程度知っており、いつ、誰が、如何なる行動を取ろうとしているか、それらの情報を私のコンピューターから知りたかったのです。またSFOに私のコンピューターを4ヶ月も不当に長い間差し押さえさせたのは、Eメールと言う現代社会に取っては不可欠な通信手段と、コンピューターに蓄積された大量の調査関係資料を私から遠ざける事により、私の現場活動への復帰をできるだけ遅らせようと、マザールが画策したからです。
私に関する事ではありませんが、マザールの不正の証拠を含むマスター・テープを、警察はフレイザーの家から証拠品として持ち出しており、未だに正当な持ち主であるフレイザーには返却していません。警察はマザールの言うままでフレイザーをひたすら目の敵にしてきた、と言う今までの経験から判断すれば、このテープが法廷に持ち出され、マザールの不正を糾弾する証拠として用いられる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。警察は一般に正義の追求をする筈のものですが、それでも自分の間違いを証明する事になる都合の悪い証拠を出せるほど、堂々とした人達でも、清く正しく、正義感に溢れた人達でもありません。