さて、「16 日本のマス・メディア関係者」で、私は皆さんの事を散々に腐しました。気分を害された方もおいででしょう。確かに大変失礼な物の言い方をしましたが、そこに一片の真実が含まれてはいなかったでしょうか。しかし今、私は皆さんに再び、曲げてお願いしたい事があります。
上記23で既に説明したとおり、リンカーン州警察における捜査本部はとっくに解散され、担当捜査官もSFOの管理官も既に辞職しています。このような大事件(と思われていたもの)の捜査が中途半端な段階で、捜査本部が解散され、要となる管理官の人事異動が行われる理由は一つしかありません。つまり、インペリアルは仕組まれた国際的大詐欺事件であった、と言うマザールのシナリオは事実上とっくに破綻している事が、捜査当局にも分かってきたのです。しかし捜査当局が正式にファイルを閉じるためには、これだけの空騒ぎを正当化するような落しどころを見つけなければなりません。大体、リンカーン州始まって以来の大事件だと大騒ぎをし、世界中に捜査員を派遣して特別予算を使いまくった挙句、実は元の情報が間違っていて本当は何もありませんでした、で終わらせられる筈がないのです。警察官と雖も所詮は官僚なのですから。
大量破壊兵器が存在する証拠があるとヒステリックに叫び、国連憲章違反を犯してまでも無理矢理開戦した結果、民主的政府の樹立どころか、今や泥沼の内戦状態となっているイラクに直面している英米と、理由は多少こじ付けでも一旦逮捕さえしてしまえば、テロリストとの武器・麻薬取引、及び詐欺の証拠は必ず見つけられる筈と思い込み、とんでもない笑劇を演じた英国の捜査当局とは、どこか発想に類似性があるように思えます。両者とも自分が始めた混乱を、面子を保ちながら収拾するには相当なエネルギーを使う事になるでしょう。今年(2007年)の中ごろには現在起訴中のフレイザー、ブルック、ゴドリー達5人に対する裁判が始まるであろうとの情報を、私はSFOから得ていますが、これがどのように収拾されるのか興味深いところです。一つはっきりしているのは、ここで彼らの行為に細かい法律違反があったかどうかなど、そのような表面上の議論に幾ら時間を費やし、またその結果として彼等に何らかの形で有罪判決を下したとしても、そんな事は投資家のための資金回収には、全く何の役にも立たないと言う事です。
捜査当局には捜査当局の立場として、本件に一応の形をつけて収めなければならないと言う必要があるかも知れませんが、私には、そんなものに付き合う気はさらさらありません。本件を通じて実質的に誰が不当な利益を得、誰が不当に損をさせられ、誰の所為でそうなったのか、それを公に検証する場所が提供されないとしたら、社会正義を追及する先進法治国家であると称する資格は、イギリスにはとてもありません。枝葉末節の論議に終始し、肝心な幹に触れる事なしに、この問題を終わらせてはなりません。この問題をイギリスの閉ざされた法廷内において、表面的な法律論のやり取りだけで有耶無耶にされてしまわないようにするため、私は日本のメディアの皆さんに是非とも協力をお願いしたいのです。再び率直に言うならば、嘗て日本のメディアの皆さんは、本件を詐欺事件だと思い込んでろくな調査もせず、単純なスキャンダル扱いで騒ぎ立てただけでした。私は池袋で行った説明会の場において、「これは監査法人(正確には清算人個人)による犯罪である」と言う事を言明しましたが、その観点からこの問題を取り上げる事ができたメディア関係者は、一人としていませんでした。その事について私は極めて深い失望を味わい、また極めて不満に思った事を隠すつもりはありません。
しかしインペリアル・グループの全てのファンド事業が清算されたにも拘らず、投資家には未だに一銭たりとも資金が返されていない一方で、清算人達のみが数十億円に上る手数料を貪っていると言う事実は、誰が見ても極めて異常な事態である筈です。投資家には未だに一銭も返されていない事の理由は、これがインペリアルによる詐欺であったからなどではなく、清算人たちによる野放図な資金回収のやり方、もっと正確に言うならば、監督者が誰もいないほとんど無法状態において、極めて利己的にやりたい放題の資産処分をやったからである事は、今や誰の目にも明らかになってきています。非常に遺憾な事ですが、本件がよくある投資詐欺事件であると報道されてしまったが故に、(さらにまた、PI社に譲渡した債権が回復されていると言う事実を知らされていなかったが故に、)殆どの投資家は本件を身の不運として諦めてかけてしまっており、清算人達は密かにほくそ笑んでいます。この事件は時間の経過とともに風化しかかっているのです。そして清算人達はこの問題が風化し、債権者達が諦め、もはや社会の関心を引かないようになるまで、単に時間稼ぎをしているに過ぎないのです。しかし断じてそれは許されてはなりません。
債権回収運動に携わってきた私は、清算人の不法行為を証明する幾つかの決定的証拠と、彼等の数々の非行に符合する膨大な状況証拠を持っており、それらは新会社の役員諸兄とも共有されています。しかし我々には法廷で戦うための十分な資金がありません。一方多くの不法行為を行い、投資家の資金を収奪してきた清算人達の背後には、マザールと言うそこそこに大きな監査法人が雇用者として控えています。これは、マザールが法人として犯した犯罪でない事は言うまでもありませんが、それでも、もし債権者からの追及の手が甘いと判断するならば、マザールは身内である清算人達の不行跡をできるだけ隠蔽し、雇用責任者としての名誉と立場を守ろうとするでしょう。彼らにとって、我々が裁判を継続できなくなるように資金を無駄に使わせる事など、朝飯前のいとたやすい事なのです。しかし、清算人達の不法行為が国の内外を問わず多数の目に晒されるようになり、社会問題化するまでに拡大し、最早清算人達を庇護する事がマザールにとっては利益にならないと判断すれば、きっと敢然として彼等を切り捨ててくる事でしょう。組織の判断基準とは、どこでもそのようなものです。
旧債権回収組合の伊藤理事長からのサポートもありましたが、私は殆ど自助努力によってここまで来たつもりです。勿論これで真相を詳細に解き明かしたなどとは思っていません。ミッシング・ピースは幾つもあります。しかし本質的には真相と言っても良いところまで迫っている自信はあります。何故ならば、清算人達の説明はうっかりしていると尤もらしく聞こえますが、ちょっと良く考えてみると、それでは理屈に合わない事だらけなのです。一方私が上に述べてきた事は、普通には(特に日本では)考えにくいように聞こえるかも知れませんが、これですと誰もが疑問に思っているものの、今まで決して答えられる事のなかった清算に係る事実関係や、私が自分自身の目で見てきた有形無形の事象(インペリアル側であると、清算人側であるとを問わず、様々な人の行動や発言など)が全て無理なく説明できるのです。根拠のない先入観は捨てて、純粋に論理のみによって考えて見て下さい。
私は投資家の利益が守られ、清算人達が法的な責任を取らされると言う、真の社会正義が達成されるのをこの目で見たいと思っています。しかしマザールとそれに踊らされた一部の投資家により、事実上潰されてしまった私の声はどこにも届きません。また投資家達の声だけではやはり依然として小さ過ぎるのも事実です。日本の一部メディアの皆さんが、嘗て私を詐欺師扱いした事はもう言いません。謝罪の掲載も求めません。その代わり、今一度この問題の本質を再検討し、社会の木鐸たる責任を果たす真に責任あるメディアとして、このような不法行為が堂々と罷りと通っている事を取り上げては頂けませんか。特に大きな記事にして頂く必要はありませんが、ある程度の期間のキャンペーンとして取り上げて、少なくとも何回か追跡報道をするような事は無理でしょうか。このウェブサイト(及びその英語版)は世界各地に点在しているインペリアルの投資家達だけではなく、関係各国の司法当局、行政当局、監督官庁、国会議員、弁護士協会、公認会計士協会、オンブズマン組織、ニュース配信社、新聞社、テレビ局等にも読んでもらうつもりです。単一グループとしては日本人投資家が最大の被害者なのです。同じ事ならば海外発のニュースとして報道されるより、日本発のニュースとして報道された方が、債権者としては素直に喜ぶ事ができると言うものです。
何卒ご高察を頂きたく思います。